岩手県立美術館

vol.6 ○○関連講座

 主任専門学芸調査員 土澤典雄
2010.10

「本田健をとりまく三つの講座」対談・ワークショップ

 昔の同僚にしばらくぶりで会うと「美術館では何をしているのですか?」「自分の専門分野が研究できていいですね。」などよく言われる。そんな時は「美術館では教育普及を担当していて・・・」と言ってもピンとこないと思うので、「外部から作家さんを招いて、体験型ワークショップを企画して実施したり、小・中学生が来館する時に美術館の案内をしたりして事務的な仕事や学校と同じ仕事がほとんどですよ。」と答える。外から見る美術館の仕事とはイメージがちょっと違うようである。

 美術館で働いて3年になるが、教育普及についての知識が全くなく、最初は自分が何をしたら良いのか分からないまま、予定されていたワークショップの準備や学校からの電話対応に追われる毎日であった。また、学芸員の資格の無い自分に与えられた学芸調査員という肩書きも、対外的に自分の立場を説明するのに苦労する場面もたびたびあったことを思い出す。

 さて、先日9月26日、私が今年度担当するイベントである常設展関連講座「本田健をとりまく三つの講座」の第1回目が開催された。遠野で活動している当館所蔵作家の本田健さんにスポットを当て、3週連続で開催する講座で、今回は本田さんが画家を志したころにお会いして影響を受けた島根県で制作されている池田一憲氏をお招きして、対談を行った。本田さんが池田さんと出合うきっかけやその後のエピソードを交えながら、本田さんの作風の変化を映像とトークで紹介していただいた。お話の中に本田さんの池田さんに対する尊敬の念や池田さんの作品に対する強い思いが感じられ、1時間半の対談があっという間に過ぎた印象を受けた。

この講座は、次週に本田さんが講師を務めるワークショップ「チャコールペンシルで描く『ココロの星々』」を行い、3週目にまた対談を行う予定である。アートプロデューサーの山口裕美さんをお招きして「ちょっと離れて考える現代アート」と題して開催される。このように対談やワークショップをミックスして実施する講座ははじめてのことで、講師の方への依頼や日程調整がなかなか難しいところがあったけれど、実際、実施してみて参加者の皆さんも興味を持っていただいたようで、ひと安心と言うところである。
この3年を振り返りながら今考えていることは、教育普及という文字から受ける印象にあまりこだわらず、むしろ、少し肩の力を抜いた感じで、美術を広い視点で眺めながらいろいろなアプローチで、より多くの方に美術館に足を運んで貰えるようなプログラムを考え企画して行きたいものである。なにしろ担当者が実施して楽しいことをしたいものだ。

岩手県立美術館

所在地
〒020-0866
岩手県盛岡市本宮字松幅12-3
電話
019-658-1711
開館時間
9:30〜18:00(入館は17:30まで)
休館日
月曜日(ただし月曜日が祝日、振替休日の場合は開館し、直後の平日に休館)
年末年始(12月29日から1月3日まで)