岩手県立美術館

Vol.122 子ども×現代アート

主任専門学芸調査員 住吉オリエ

 2025.11

 岩手県立美術館では岩手県に縁のある作家の作品を収蔵しており、その中には国内外で活躍している優れた現代アーティストの作品も収蔵されております。
 私は来館された方と一緒に作品を鑑賞することが多いのですが、その際に「現代美術は難しい」、「どのように鑑賞してよいのか分からない」という言葉をよく耳にします。
 しかし、来館された子ども達と一緒に鑑賞してみると、子どもたちの眼には現代アートが非常に魅力的に映っていることがわかります。
 以前幼稚園児の皆さんがコレクション展の観覧をしているところにお邪魔して一緒に作品鑑賞をしたことがあります。
 百瀬寿氏の作品を一緒に鑑賞したのですが、子ども達は生きてきた5~6年の経験の全てを使って作品を感じ取っているようです。
 和紙やネパール紙を通して薄く色が透けている部分は雲を透かして見る空の色。箔の光の反射は水面に映る光のきらめきや空からひらひらと舞う雪。様々な色は動物の色や風の色だそうです。沢山の子どもたちに囲まれて次々に自分の感じたことを聞かされたのですが、どの子どもの言葉も同じものはなく、その豊かな感性にこちらも心が研ぎ澄まされるような気がしました。
 幼稚園に戻ってから子どもたちは百瀬氏のような作品を作りたいと相談し、全員で共同制作をしたそうです。作品展示会にお招きいただきその作品を拝見しましたが、百瀬氏の作品と同じくらい素晴らしい作品だと感じました。

百瀬寿氏の《NE. Platinum to Gold》と《NE. Gold,Platinum to Silver》が展示されている様子(2023年)。

幼稚園児の皆さんが作成した作品(2023年)。

 また、菅木志雄氏の《集向》という作品を、子ども達と一緒に鑑賞したことがあります。釣竿・石・コンクリートブロックなどで構成された作品なのですが、子ども達の眼には色々なものが映るようです。「見る方角によって糸の色が光の色で変わる。それは時間を表しているようだ。」「釣り竿のしなり方が風に揺れる稲穂のようだ。」「空間を切り裂くトンネルの中にいるようだ。」など、柔軟な発想で作品を語ります。
 自分の体験や感じたことを元に作品を見始め、大人たちに気持ちを伝え、また、周囲の友達の発言を聞いているうちによりイメージが広がっていく。更には作品の本質に迫っていく。子どもたちにとって現代アートは決して難解なものではないのです。
菅木志雄氏の《集向》を子ども達と鑑賞している様子。

菅木志雄氏の《集向》を子ども達と鑑賞している様子。

 ぜひこれからもたくさんの子ども達に遊びに来てもらい、多くの作品に触れてもらいたいです。また、何よりも感じたことを言葉にして伝え、それを受け止めてもらえるということが大切だと思います。ご家族でお立ち寄り頂き、お子様方と一緒に楽しくお話しながら現代美術作品をご観覧ください。そうすることで、大人の皆様もきっと現代美術アートの魅力をより深く感じることができるでしょう。
 現代アートはすばらしい宝物だと思う今日この頃です。

岩手県立美術館

所在地
〒020-0866
岩手県盛岡市本宮字松幅12-3
電話
019-658-1711
開館時間
9:30〜18:00(入館は17:30まで)
休館日
月曜日(ただし月曜日が祝日、振替休日の場合は開館し、直後の平日に休館)
年末年始(12/29~1/2)