岩手県立美術館

vol.30 2年目の「あーとキャラバン」

主任専門学芸調査員 土澤典雄
2012.12

「いろとひかりの王国」WS様子

 去年の震災後、何とかして美術館活動を沿岸地域でしたいという思いで「あーとキャラバン」がスタートし2年が過ぎようとしています。当初、戸惑いと不安が交錯するなか陸前高田市内の当時避難所になっていた3つの小学校を会場に美術館で実施しているアートデオヤコの拡大版として「ユメノマチができるまで」を開催し、カラフルな木片を思い思いのお店や乗り物、動物を積み上げていったのです。会場には、子どもたちの屈託のない笑顔が広がり、色の無くなった町に少しでも色を届けることが出来たと、来て本当に良かったと思ったことを覚えています。

あーとキャラバン記念撮影

この活動は5月から12月にかけて沿岸地域を北上し11市町村18会場で実施し、7月からは美術館でもこの「ユメノマチ」を行い、最終的に2000人以上の方の参加になりました。美術館のグランド・ギャラリーを埋め尽くすほどに拡大した「ユメノマチ」は、人間の創造するチカラが結集したものになったのです。

今年度は、昨年に引き続き沿岸地域でアートデオヤコやワークショップ、講座などを宮古市から南部の地域で実施することを計画し、オヤコのテーマは「いろとひかりの王国」と題し70㎝四方ほどのビニールにセロハンや色紙を貼り、そのビニールを窓ガラスに貼り合わせてステンドグラス風に仕立てて行く内容としました。 第1回は、5月に山田、宮古で開催し、山田では町内の小学校の運動会と重なり少人数の参加でしたが、今年のキャラバンがスタートしたのです。翌日、宮古でオヤコと学芸員講座を開催しました。昨年と同じ会場ということもあり、「ユメノマチ」に参加してくれた子どもたちもたくさん集まり、楽しく会を進めることができました。学芸員講座では美術館で開催中の「松本竣介展」に合わせ松本竣介の作品について紹介しました。 第2回は、7月に大槌、釜石を会場にオヤコや「製本ワークショップ」を開催し、第3回は、10月に大船渡でオヤコ、「不思議なダンボール箱の笛ワークショップ」、館長講座を開催しました。 第4回は、12月に陸前高田を会場に「アート・キャンドルの夕べ」、オヤコと学芸員講座で、講座は震災で被災した高田市博物館の美術品レスキューについてお話しました。

 全体を通して参加者は多いとは言えませんでしたが、昨年の「ユメノマチ」に参加していただいた方がまた参加いただき、私たちも昨年のことを思い出し、嬉しい気持ちでいっぱいでした。この活動は、広くそして長く続けることに意義を感じています。これからも県内各地域に出かけ、地域の皆さんと触れ合う機会を設けて行きたいと考えています。

 また、どこかで皆さんと会えることを楽しみにしています。

岩手県立美術館

所在地
〒020-0866
岩手県盛岡市本宮字松幅12-3
電話
019-658-1711
開館時間
9:30〜18:00(入館は17:30まで)
休館日
月曜日(ただし月曜日が祝日、振替休日の場合は開館し、直後の平日に休館)
年末年始(12月29日から1月3日まで)