岩手県立美術館

企画展

5つの出会い-岩手県立美術館コレクション再発見

日時
2006年7月29日(土)〜2006年9月10日(日) 
場所
企画展示室

詳細

会  期: 2006年7月29日[土]-9月10日[日]
主  催: 岩手県立美術館
後  援: 岩手日報社、NHK盛岡放送局、IBC岩手放送、テレビ岩手、岩手朝日テレビ、めんこいテレビ、エフエム岩手、マ・シェリ
出品点数: 絵画、彫刻、工芸など約100点
観 覧 料: 一般/500円(400円) 高校・学生/350円(300円)
小・中学生/200円(150円)
( )内は20名以上の団体料金
企画展の観覧料で常設展もご覧になれます
岩手県立美術館は今年で開館5周年を迎えました。
当館では、萬鐵五郎、松本竣介そして舟越保武をはじめとする近代から現代にいたる岩手ゆかりの作家の作品を収集、展示しています。今回の展覧会はこれまでの常設展示とは異なる視点によって内容を構成し、コレクションの新たな魅力を引き出そうとするものです。
当館が収集を進めている岩手ゆかりの作家たちは、その活躍した時代や制作した作品もさまざまです。常設展示では年代順や作家ごとに作品を展示する場合が多いのに対して、この企画ではそのような手法によらず、新たな視点により内容を構成しました。
本展は「5つの視点」に基づいて、お互いに好対照を成す、あるいは共通項を持つ作家をそれぞれ二人ずつとりあげ、彼等の作品を並べて比較してみる「出会い」の場を設けました。そのことにより、それぞれの作家や作品の個性を浮き彫りにし、作家のスタンスや作品の知られざる側面を改めて眺めてみようとするものです。今回の試みにより新たな魅力に出会うことができれば幸いです。


1.萬鐵五郎 と 五味清吉 ― ふたつのベクトル
同時代を生き、大正から昭和にかけて活躍した二人の岩手の画家。二人が目指した方向は全く異なるものでした。大正期にあって、日本の前衛画家の先鋒として孤軍奮闘した萬鐵五郎と、平明で穏健な画風によって画家の地位を築き、岩手の画壇の発展に尽くした五味清吉の作品を対照しながら二人の目指したものに注目します。

2.鈴木盛久13代 と 内藤春治・鈴木貫爾 ― 伝統と革新
13代盛久と貫爾は藩政時代より代々続く釜師の鈴木家の生まれ。13代盛久は戦時中も南部鉄器の伝統の技を守り次世代へ継承しました。盛久とほぼ同時代を生きた内藤春治は、日本の近代金工史の上でも重要な作家の一人です。昭和初期には欧州の最新の工芸動向に影響を受けたモダンな造形により日本の工芸界に革新運動を展開しました。盛久の息子の貫爾は伝統的な釜師を継がず東京美術学校へ進み、内藤春治のもとで鋳金による美術表現を学び、独特の味わいを持つ抽象的な造形作品を生み出しました。

3.松本竣介 と 村上善男 ― スタイルの変遷
松本竣介は昭和前期に活躍した画家です。研究熱心であった松本は、戦後間もなく亡くなるまでの短い生涯でしたが、古典や同時代の美術に学びながら、独自の作風を追求しつづけました。その結果、作風が何度か大きく変化しています。村上善男は、「おまえは東北で闘え!」と言い渡した岡本太郎との出会いをはじめ、幾度かの転居によるその土地との関わりなどが契機となり、彼も作風が大きく変化してゆきました。作風が幾度か、あるいは大きく変化するということは特別なことではありませんが、ここではその振幅の大きかった二人を対照してみようという試みです。

4.千葉勝 と 本田健 ― 風土とともに
千葉勝は奥州市出身ですが、バーントシエナという赤茶色の絵具の色に魅せられ、発祥の地であるイタリアのシエナに渡り、晩年までイタリアで過ごした画家です。千葉は和紙や銀箔など日本の素材も用いながら、イタリアの自然と風土を表現しようとしました。本田健は山口県出身ですが、自らのうちに北志向を認め、岩手県遠野にたどり着きました。彼は遠野の山村に居を構え、大画面にチャコールペンシルひとつで身近な風景を拡大して手作業で写し取る仕事をしています。彼の仕事は遠野という土地と密接に結びついて生まれたものです。

5.舟越保武 と 百瀬寿 ― 内面の光
表面上はこの二人の作品に共通するものは何もないように見えますが、作品の内奥には一筋の光ともいうべきものがほのかに見えはしないでしょうか。舟越保武は戦後の具象彫刻を代表する作家の一人で、キリスト教上の聖人像や大理石による端正な面立ちの女性像などで知られています。舟越の作品は、人間が持つ弱さと強さを内包しながらも、普遍的で高みを感じさせます。百瀬の作品は、色の濃淡や重なり、にじみの効果を利用したもので、表現される対象は見受けられませんが、用いられた色彩に宿る光に、舟越作品にも通ずる普遍性や内面性を感じさせます。

関連イベント

■ギャラリートーク
 7月30日[日]・8月15日[火]・9月1日[金] 14:00-
■美術講座 第1回「松本竣介が描いた風景」
 講師:濱淵真弓(当館学芸員)
 8月5日[土] 14:00-15:00
■美術講座 第2回「萬鐵五郎の水墨画-茅ヶ崎時代を中心に」
 講師:根本亮子(当館学芸員)
 8月12日[土] 14:00-15:00
■美術講座 第3回「五味清吉-その作品をめぐって」
 講師:加藤俊明(当館学芸員)
 8月19日[土] 14:00-15:00
■美術講座 第4回「岩手近代鋳金のはなし」
 講師:吉田尊子(当館学芸員)
 8月26日[土] 14:00-15:00
■美術講座 第5回「村上義男とその時代」
 講師:大野正勝(当館学芸普及課長)
 9月2日[土] 14:00-15:00
■コレクション講座「萬、竣介、舟越の魅力をさぐる」
 講師:中村光紀氏(盛岡市観光文化交流センター館長)
 9月10日[日] 14:00-15:30

岩手県立美術館

所在地
〒020-0866
岩手県盛岡市本宮字松幅12-3
電話
019-658-1711
開館時間
9:30〜18:00(入館は17:30まで)
休館日
月曜日(ただし月曜日が祝日、振替休日の場合は開館し、直後の平日に休館)
年末年始(12月29日から1月3日まで)