岩手県立美術館

イベント

ドキュメンタリー上映会「魂のリアリズム 画家 野田弘志」(2014/71分)

日時
2019年8月16日(金)  10:00ー11:11
場所
ホール

(C)2014 パル企画

【作品概要】

世界の美しさ、その一瞬の姿を見つめ続ける、

リアリズム画家・野田弘志

誰もが知る名画レオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》やフェルメール《牛乳を注ぐ女》などに代表される、写実主義=リアリズム。世界の美しさ、その一瞬の存在のあるがままを見つめた彼らのまなざしを現代に継ぐ日本のリアリズム絵画の第一人者・野田弘志。デザイナー・イラストレーターの仕事を経て、30代で美術界に鮮烈なデビューを飾って以来、戦後の抽象絵画全盛の中、写実を追求し続け、常に日本の写実絵画界を牽引してきた。70代の現在、北海道・洞爺湖を望む原生林にアトリエを構え、日々、自然を見つめ、人間を見つめ、キャンバスに向かい続けている。圧倒的な密度の作品を完成させるために必要とする期間は一作品に一年。本作では、最新作《聖なるものTHE IV 鳥の巣》の制作過程を、北海道の豊かな四季と共に丹念に追った。監督は『生きもの-金子兜太の世界』(10/DVD/文部科学大臣賞受賞)や劇映画『爆心 長崎の空』(13)など、映画を通して人間の本質を見つめ続けてきた日向寺太郎。魂を込めてリアリズム絵画へと向かう、一人の画家の苛烈な情熱と献身の姿を、克明に刻印した静謐な美術ドキュメンタリー。

 

 

【日向寺太郎監督 コメント】

私が野田弘志さんの絵と出合ったのは約20年前のことである。きっかけは、最も敬愛する映画監督ビクトル・エリセの新作『マルメロの陽光』を見たことだった。映画の主人公であるガルシア・ロペスが世界的に有名な画家であることも知らなかった。映画は、庭にあるマルメロ(カリンに似た実をつける樹木)の樹を描こうとするロペスの姿と生活を日記形式で追ったものだった。天候や光によって、日々変わりゆくマルメロの樹を画家は描こうとするが、描き切る前にマルメロの実は落ち、絵は未完に終わる。ドキュメンタリーのように見えるが、エリセとロペスが共同で作り上げた魅力的なたくらみに思えた。

ドキュメンタリーの師である松川八洲雄監督に話すと、美術に造詣の深い松川さんは、「野田弘志っていう画家、知ってる?」と私に言った。「知りません」と答えた私に一冊の画集を差し出した。そこには数々の精緻な静物画や人物画があった。ロペス同様、リアリズム絵画だった。見入っている私に、松川さんはにやりと笑いながら、「頭おかしいでしょ(本当はもっと直截的な言葉だったが)」と言った。画家を志していたこともある松川さんの最高の褒め言葉だった。

野田弘志という名前は強く脳裏に刻まれながらも、月日は流れた。2011年5月、東日本大震災後の絶望的な気持ちの中、「日曜美術館」(NHK)の特集が野田弘志であることを知った。美しいだけでなく、容赦なく厳しい自然に惹かれ、移住したという北海道のアトリエは、天井が髙く、白い壁一面に動物の骨が飾られていた。そこで話す野田さんの姿は哲学者のようであり、話される言葉は、存在と死を見つめ続けてきた人間が、深い所から発する根源的なものだった。番組を見ながら、大それたことを想った。野田さんを主人公に、私なりの『マルメロの陽光』を撮ったら、面白い映画になるのではないか。

私は、思い付いた企画はすぐに、パル企画代表でプロデューサーの鈴木ワタルさんに話すことにしている。持って行った画集をじっと見た鈴木さんは、嬉しいことに、「やりましょうよ」と即答してくれた。ちょうどタイミングよく、千葉県にあるリアリズム絵画専門のホキ美術館で、野田さんの講演があることを知った。講演が終った野田さんに、「監督の力量は及びませんが、野田さんで『マルメロの陽光』のような映画を撮りたい」と単刀直入に話した。野田さんは少し驚いた顔をしたものの、細かいことも聞かず、「一緒にやりましょう」とこれもまた即答してくださった。

それから、断続的ではあるものの一年半の撮影が続いた。ここから先のことは映画に描かれている。野田さんにとって、生きることは絵を描くことであり、リアリズムとは手法ではなく存在を問う哲学だった。来る日も来る日も、一本の線をしっかりと描き、油絵具を塗り重ねていくこと、ふわふわひらひらした時代に、そのことだけは確固としたものに思えた。

 

※【作品概要】【日向寺太郎監督 コメント】は撮影当時のものです。


【スタッフ・出演者】

出演:野田弘志

   築茂由起子     谷川俊太郎     保木将夫     野田けい子

   清水恭子       村岡智昭       鈴木義史     青野友哉

   永山優子       岩本仁         横井彬       須藤栞

   野田・永山塾のみなさま

 

監督:日向寺 太郎

撮影:清水良雄 / 編集:川島章正 / サウンドデザイン:橋本泰夫

音楽:水野敏宏 / チェロ演奏:丸山泰雄 / 題字:野田弘志

カラリスト:久保田尚

ポストプロダクション:ヨコシネディーアイエー

ラボコーディネーター:高宮大 / 録音スタジオ:シネバザール

スタジオ助手:野村みき

協力:伊達市噴火湾文化研究所

   だて噴火湾アートビレッジ実行委員会

   伊達市噴火湾文化研究所支援協会「かけはしの会」

   堅田進  大島直行  仁木行彦  伊藤直美  斉藤はるか

   大高酵素  須藤治療院  平口建設

   ホキ美術館  蘭島閣美術館  豊橋市美術博物館

   求龍堂  横井春風洞  岩本綜合漢方  日本映画撮影監督協会

   中野功士  石谷ライティングサービス  カモメファン  モンタージュ  パナソニック映像

助成:文化芸術振興費補助金

製作・配給:パル企画

(2014/日本/71分/DCP)

(C)2014 パル企画

鑑賞無料 事前申し込みは不要です。

岩手県立美術館

所在地
〒020-0866
岩手県盛岡市本宮字松幅12-3
電話
019-658-1711
開館時間
9:30〜18:00(入館は17:30まで)
休館日
月曜日(ただし月曜日が祝日、振替休日の場合は開館し、直後の平日に休館)
年末年始(12月29日から1月3日まで)