岩手県立美術館

Vol.87 見て座って触れる楽しみー美術館内のアートな椅子たち 

主任専門学芸員 濱淵真弓
2018.8

 岩手県立美術館でのアートの楽しみは展覧会だけではありません。アートを楽しむための空間を演出するインテリアももう一つの楽しみ。今回は館内で座ることのできるアートな椅子を少しご紹介します。

 まず、美術館の中で人気ナンバーワンの椅子といえば、ラウンジにあるネルソンココナッツチェアでしょう。アメリカのミッドセンチュリー家具の名品の一つです。60年ほど前、建築家・デザイナーのジョージ・ネルソンが、デザインオフィスの仲間たちと共にデザインしました。ネルソンは、かのイームズ夫妻と同様、ハーマンミラー社のデザインに長年携り、当時のアメリカにおけるデザイン界の中心的人物でした。丸いココナッツの殻をパカッと割ったかのような、ユニークでどっしりとした形のシェルにラクジュアリーな黒の革張り。案外きゃしゃな金属の足で支えられていて、なんとなく宙に浮いた感じがします。当館ではネルソンペデスタルテーブルが添えられて、青いネオン管の灯るナイトミュージアムの夜には未来的な空間を演出します。

 次は、岩手県美ツウなら講演会やコンサートで必ず座ったことがあるはずの、こちら。ホールやグランド・ギャラリーでのイベントで、整列してみなさんをお出迎えする、デンマーク、フリッツ・ハンセン社のヴィコ・ソロです。イタリアのヴィコ・マジストレッティがデザインしたこの椅子は、縦横の直線・直角によるデザインが印象的な当館の建物の中で、シンプルながらも有機的なフォルムによりその存在をさりげなくアピール。黒いプラスチックの背もたれとグレーの木の座面は、館内のシンプルな色調を邪魔しません。そして何より、軽くて丈夫。スタッキングして台車にのせ、ささっと移動させることのできる取り扱いやすさが魅力で、現在では流通していないレアものです。

 なかなか利用される機会が少ないですが当館にいらっしゃったら是非座っていただきたいオススメは、常設展エリア内松本竣介・舟越保武展示室の休憩室にある、紺色のクッションが心地よさそうな椅子。こちらはデンマークのフレデリシア社、ボーエ・モーエンセンがデザインしたローバックイージーチェアです。直線的な木のフレーミングに、傾斜の掛かった背もたれと座面の布クッションの組み合わせは、身体へのフィット感が半端なし!座面が低くて少し見上げる感じになりますが、座り心地は絶妙です。地味な色調の空間にクッションの紺が差し色となってなんともおしゃれ。クッションが外れないようにフレームとつなぐほんの小さなベルトさえ本革製で、隅々までスキがないこだわりのデザインに驚かされます。

 美術館が開館して17年。今でもこれらの椅子が壊れることなく使われ続けているのは来館者のみなさんが大切に扱ってくれるからこそ。この先も、長く愛されてもらいたいものですね。

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岩手県立美術館

所在地
〒020-0866
岩手県盛岡市本宮字松幅12-3
電話
019-658-1711
開館時間
9:30〜18:00(入館は17:30まで)
休館日
月曜日(ただし月曜日が祝日、振替休日の場合は開館し、直後の平日に休館)
年末年始(12月29日から翌年1月2日まで)