岩手県立美術館

vol.25 こんなこともやっています。

非常勤専門職員 佐々木 奈美
2012.7

アートデオヤコ「そらいろなにいろ?」2012年4月

みなさんにとっての美術館はどんな場所ですか?作品を鑑賞するところ。日常ではない特別な場所。癒しの場所。様々な答えが出てくると思います。岩手県美には展覧会の他、作品と人、人と人、出来事と人をつなげる様々なイベントがあります。その中のひとつ、アートデオヤコについてお話しします。

アートデオヤコ「そらいろなにいろ?」2012年4月

アートデオヤコは岩手県立美術館が創立してから取り組んでいる活動のひとつで、月に1回親子のコミュニケーションを大切にしながら活動するイベントです。展覧会に関連していたりいなかったり。会ごとにいろ〜んな素材を使ったりします。実際に美術の作家さんが関わってくれた時もありました。

今年度4月のアートデオヤコは「そらいろ、なにいろ?」と題したイベント。今日のそらいろを観察し、その色を紙いっぱいにのせ、その後は白と黒の絵の具だけでお絵描き。最後には、当館の所蔵作家である松本竣介がよく使っていた色を使い、ちょっとした作家の追体験をしていたという種明かし。


 晴れるといいなぁ。そんなことを思いながら、朝目が覚めてガッツポーズ。晴天なり。


 「今日のそら、なにいろ?」の問いかけに「みずいろ」「あお」「うすいみずいろ」…一番元気な声で「あか!」。これだから面白いなぁと思いながら、イザ絵の具あそび。今日のそらいろで紙をいっぱいにしていきます。中には紙を小さいと感じ、はみ出してシートの上まで色をのせていく子、絵の具をそのまま紙に出し始める子の姿も。はじめは美術館スタッフがやっていたえのぐ屋さんを、お父さんお母さんがやってくれたりもしました。


 全部をこちらで準備してしまうのではなく、参加者と一緒になってつくっていく活動。時には子どもたちが引っ張ってくれたり、お父さんお母さんに手伝ってもらったり。その日そろった参加者によってできあがっていく。それがアートデオヤコだと思えるようになりました。


 私がアートデオヤコに関わって6年目。参加して62回。数字にしてみると結構な数になりますが、ひとつとして同じ活動はありませんでした。その場の出来事に反応できる時だからこそ、自分の中から湧き出るものを発揮してほしいし、それをみてみたい。


 なんだかんだで大学時代からの10年間、子どもたちと美術が触れ合う機会の近くにいる私。無意識のうちにそこにひきよせられているのかも、と思ったりすることもあります。それを目の当たりにできることは、本当に幸せなことです。


 美術館は大人や美術を専門とする人たちだけのものではありません。様々な世代が様々なかたちで関われる場所だと思います。


 アートデオヤコに参加してくれた子どもたちが、大人になった時にまた美術館に足を運んでくれないかなぁ…記憶の片隅にこの体験が残っていてくれたらなぁ…そんな大それたことを願っている私です。


 美術館に行くことをためらっているお父さんお母さん、だまされたと思って、一度アートデオヤコに参加してみませんか?

岩手県立美術館

所在地
〒020-0866
岩手県盛岡市本宮字松幅12-3
電話
019-658-1711
開館時間
9:30〜18:00(入館は17:30まで)
休館日
月曜日(ただし月曜日が祝日、振替休日の場合は開館し、直後の平日に休館)
年末年始(12月29日から1月3日まで)