岩手県立美術館

vol.19 そうだ!美術館へ行こう!-我流、美術館の楽しみ方

 非常勤専門職員 北條恭子
2012.1

私の当館お気に入りスポット

 もともと美術館やギャラリーめぐりが好きだったはずの私も、昨年はなかなかそんな気分になれず目の前の出来事に日々追われる毎日でした。でもふと目に入った一枚のポスター、宮城県美術館で開催されていた「フェルメールからのラブレター展」…“そうだ!美術館に行こう!”突如思い立った私は日帰りでふらりと出かけたのでした。

 とにかく開館前から長蛇の列と覚悟すべしとの情報を得ていたので、本来なら休館日である月曜日の午前中、きっと空いているであろう時間を狙っての鑑賞でしたがやはり人気のフェルメールが拝めるということで美術館は大賑わい。人で混み合う美術館なんて久しぶり!とそわそわする気持ちを落ち着かせつつ、荷物をロッカーに預けて身軽な体制でいざ、展示室へ。ごあいさつパネルからすでに並んで鑑賞しているお客さんをよそに、我流の美術鑑賞ルールにのっとって、まずは展示室内をささっと駆け足で最終展示室まで巡り、展示室の広さや人の混み具合を確認しつつ、作品をチラ見。そのときに作品解説パネルや作家名はチェックしないことが私流のポイント。『自分の宝物にするならどの作品かな?』…そんな気分でお気に入りの作品を選びつつ、最初に戻って気になった作品をじっくりと近づいたり離れたり立ったり座ったり…とにかく満足するまで眺める、眺める、眺める…。どんなに素晴らしい図録やポストカードでも目の前の本物にはかなわないので、作品の質感や色艶を見逃したくないという一心で作品の細部までを逃さぬように凝視!すべての展示作品をじっくり見るのはよほどの体力が必要なので、有名無名に関わらず、自分の本能のままに気になった作品のみを鑑賞する…これが我流美術鑑賞の壺。この展覧会の場合、ひいき目じゃなくてもフェルメールの作品の持つ色彩の輝きは他を圧倒し、修復を終えたばかりの色彩、光・構図…まさに百聞は一見に如かず!余韻にひたりつつ、展示室を後にしました。

鑑賞の後は記念にミュージアムショップで買物するもよし、レストランやカフェで展覧会にまつわるメニューを楽しむもよし、ライブラリーで気になった作品のことを調べてみるのもよし。お気に入りのスポットでくつろいでいるうちに、気が付くと心も身体もすっかりほぐれて、さぁ!明日からも頑張ろう!とリフレッシュしている自分がいました。
日常からほんのひととき解放される場であり、気分転換の場所であり、自分をちょっとだけ裕福な気持ちにさせてくれる時間と空間を提供する場、それが私にとっての美術館。2012年は少しでも多くの人に私自身忘れかけていた“そうだ!美術館に行こう!”という気持ちを、ふとしたときに思い出してもらえますように…。
ちなみに、私の当館お気に入りスポットは、ラウンジのココナッツチェアーや二階の長いベンチから望む、まるで額装されたかのように四角い窓で切り取られた岩手山、作品とじっくり対峙できる常設展示室、エレベーターの天井から見える四角い空。何より一番は企画展示室内にある休憩室。気になった方はぜひ美術館にいらしてください。合言葉は“そうだ!美術館へ行こう!”ですよ。

岩手県立美術館

所在地
〒020-0866
岩手県盛岡市本宮字松幅12-3
電話
019-658-1711
開館時間
9:30〜18:00(入館は17:30まで)
休館日
月曜日(ただし月曜日が祝日、振替休日の場合は開館し、直後の平日に休館)
年末年始(12月29日から1月3日まで)