岩手県立美術館

Vol.97 美術館の楽しみ方 ~入館料は作品の預かり代金?編~

学芸普及課 学芸調査員 菅原睦

 2020.12

 学生時代にお世話になったある美術史の先生がこうおっしゃっていました。
 「美術館の入館料が高い?あれはな、美術館で自分の所有する作品を預かってもらっていて、その作品の管理費を払っていると思えばいいのだよ。自分じゃ管理できないでしょ。」
 今考えればなるほどな、と思える一言です。
 
 とんでもない、そんなに単純なものではない、と御叱りを受けそうでもありますが、美術館の作品は全て自分のもの(でもあるの)だと考えると、何だかお金持ちの文化人になったような気持ちになりませんか。専門的な知識と経験のある職員に作品の収集と管理を頼み、美術館の立派な展示室に並べてもらう、そして時間が許される時に鑑賞に訪れる…うーむ。
 
 また、先生は続けてこうおっしゃっていました。
 「美術館に行ったならば最後にレストランかカフェに寄りなさい。それも館内にあるところだよ。美術作品の鑑賞なんて、ある意味浮世離れしたことなんだから、最後に美味い食事をしながら作品について話をするの。それが楽しい。旅行みたいなものなんだよ。」
 
 当時、美術館は勉強と研究の場所、と考えていた勤勉な学生だった私にとっては非常にショックな考え方でした。(そもそも県立美術館の所蔵作品なら、実際に県民全員がある意味オーナーみたいなものだ、と途中で気づいたことはさて置き、)当時はそんなお話を拝聴するたびに美術館に行くことが楽しくなり、作品の見方も少しずつ覚えた様に思います。
 
 もちろん、美術館に向かうときには今では誰よりも旅行気分です。作品鑑賞の後には美術館をバックに記念撮影、お洒落なケーキと珈琲を味わいながら妻との語らい。夕日に映える野外作品を眺めながら美術館に別れを告げる…気持ちの良い日です。美術館に通い慣れている方には今更な話ではありますが、美術館の楽しみ方は多種多様で良いのだと思います。
 
 ミュージアムショップの品物が好き、レストランのあの味が好き、美術館の雰囲気が好き、建物の外観が好き…作品鑑賞以外にも美術館という環境を気軽に楽しんでいただければ幸いです。そして、そのひと時が来館者の皆さんの豊かな時間となり、よい思い出となりますことを心から願っています。皆さんのご来館をお待ちしております。
 
 写真は自作レンズで撮影した当館グランドギャラリーの様子。
 いろいろな楽しみ方があります。
 

岩手県立美術館

所在地
〒020-0866
岩手県盛岡市本宮字松幅12-3
電話
019-658-1711
開館時間
9:30〜18:00(入館は17:30まで)
休館日
月曜日(ただし月曜日が祝日、振替休日の場合は開館し、直後の平日に休館)
年末年始(12月29日から1月3日まで)