岩手県立美術館

Vol.81 「美しさ」を支える人々

主任専門学芸調査員 土谷文子
2017.7

 

岩手県立美術館は、美しい。建築美もさることながら、ゴミひとつ落ちていない。職員トイレすら、汚いと思ったことは一度もない。よくお客様に「素敵な建物ですねえ」と言われる。「そうなんですよ、『素』、がテーマでして、シンプルながらも素材にこだわり…」と説明をするが、その建築を引き立たせているのは、行き届いた清掃であることは間違いない。「1日に何度も掃除しなくても、きれいなのになあ…」と思ったこともあるが、毎日見かけるうちに気が付いた。汚いから掃除をするのではない。キレイを保つために掃除をするのだ、と。

 

清掃員のみなさんは、見えないところでも日々闘っている。例えば玄関のコンクリートのしみ。タワシでかなり力を入れてこすらなければ落ちないそのしみは、ワンちゃんのお仕事の跡。さらにワンちゃんが大きなお仕事をすると、柔らかいものは取るのがなかなかの一仕事になる。たまに狸さんもお仕事をしていく。近くに川や緑があり、けもの道もある。蛇さんだって登場する。側溝の穴からモグラたたきのごとく、ポコポコと出ることもあるらしい。悲鳴が聞こえたら、それはおそらく、蛇との遭遇である。カラスだって負けちゃいない。おいしいクルミを食べるため、自販機前のコンクリートにクルミを落とす。ついでにお仕事もしていく。その白いお仕事痕は、なかなか手ごわい。

 

冬は雪とも闘う。開館時間にお客様をお迎えするためには、その前に美術館周辺の雪かきを終えていなければならない。そのために、夜中の12時か1時に一度起きて積もり具合を確認し、出勤時間を調整する。

夏場の闘い。30度を超える炎天下での草取り。熱中症対策としての水分補給は、のどが乾いたら飲むのではなく、30分おきに定期的に飲むのだそうだ。「自分が倒れたら他の人に迷惑がかかるから…」というプロ意識に頭が下がった。

 

エントランスからグランドギャラリーにかけての、オリーブグリーンと呼ばれる南アフリカ産の花崗岩。表面にある微妙な凹凸の柾目模様は、北上川と同じ南北方向に流れている。

落ち着いた色合いの素敵なその石の凹凸には、ほこりがたまる。それを毎日、隅から隅まで

かき出している。教えていただくまで、そこにほこりがたまるとは考えてもいなかった。

 

清掃員のみなさんが、日常清掃を毎日しっかり行っているから、年に数回入るワックスがけの職員の方が、非常に楽だとおっしゃっていた。ワックスののりがいいと、その後の清掃も楽になる。この連携がうまくいっている。

 

この文章を書くにあたって、清掃員の方々にたくさんお話をきかせていただきました。みなさんの生き生きと語る姿から、心を込めて日々清掃されていることが伝わってきました。ありがとうございました。

 

美術作品を引き立たせるための建物。建物を引き立たせるための清掃。いろんな「美しさ」を感じられる岩手県立美術館に、ぜひ、足を運んでみませんか? 


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岩手県立美術館

所在地
〒020-0866
岩手県盛岡市本宮字松幅12-3
電話
019-658-1711
開館時間
9:30〜18:00(入館は17:30まで)
休館日
月曜日(ただし月曜日が祝日、振替休日の場合は開館し、直後の平日に休館)
年末年始(12月29日から翌年1月2日まで)